既に出店していて移住先に移転する、または移住先で新たに出店するつもりの人なら、どこに出店するのか、店舗は建築・購入・賃借のどれにするのか悩みも多いでしょう。
一般的に、人が多く集まる中心部で地価が上がると、人口は郊外に流れます。そして、郊外に流れた人口を狙って、郊外型の大型店舗や複合商業施設が出店し始めると、中心部で盛況だった商店街は徐々に衰退していきます。
このような経緯で「シャッター通り」と化した商店街は、今や全国の至るところにあり、空洞化した中心部を再生しようとする動きは、多くの自治体で見られます。その一環が、空き店舗の活用に対する支援です。
支援制度の仕組み
出店費用は事業の採算性に大きく影響しますから、できるだけ費用を抑えたいのは誰でも同じ。であるなら、空き店舗を使い補助金を受けて費用を減らすのも、事業継続には大切な選択ですよね。
空き店舗活用を支援している自治体には、出店先の区域を限定している場合と、無条件の場合があります。これは、商工会との関係など、地域の事情も関係してくるので仕方がないとはいえ、できるだけ無条件の自治体を選びたいところです。
ただし、どのような店舗でもそうですが、マーケティングを無視した出店が成功する事例は多くありません。空き店舗がなぜ空き店舗になったのか、良く考えて出店と支援制度を使うべきか決めましょう。
【空き店舗活用に対する費用支援の例】
- 空き店舗を改修するための費用
- 空き店舗を賃借するための費用(賃借料)
- 開店に必要な設備を揃える費用
- 開店に伴う販売促進の費用(サイト制作費や広告など)
主な支援内容は、上記のとおりです。空き店舗を購入した場合、改修費を補助が個人の資産形成になってしまうことから、支援対象を賃借に限定している自治体もあるので注意してください。
この支援制度を設けている主な自治体
空き店舗の活用は、全国的にどこでも課題としているので、支援制度がある自治体もたくさんあります。一方で支援金額の上限は、自治体によって大きく幅があり、上限額の大きい自治体を選ぶようにしました。
なお、上限額の支援を受けるためには、「上限額×補助率の逆数」以上の費用が必要です。必要とする費用を見極めて、上限額か補助率の高さで選びましょう。
北海道苫前郡羽幌町(はぼろちょう)
補助率は1/3と低いながらも、町外事業者なら上限500万円(町内事業者は上限300万円)までの補助を受けられます。上限500万円はかなり高い水準ですが、100万円以上の改修費と決まっているので、小規模な工事では対象外です。
支援の主な条件 | ・1ヶ月以上の空き店舗 ・1階に店舗部分がある ・大規模小売店舗内の店舗ではない ・賃貸を目的としていない ・空き店舗の所有者が2親等以内の親族(配偶者含む)ではない ・町外で事業を営んでいる中小企業者 ・3年以上事業を継続する |
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支援内容 | 改修費(100万円以上で内外装、設備工事、屋外広告物の制作や設置など)の1/3(上限500万円) |
公式HP | その他特色>空き店舗の活用 |
富山県南砺市(なんとし)
購入も賃借も対象にしていますが、賃借料の補助が3年間と長く、賃借料だけで最大90万円になります。販促費が別枠で補助されているのも都合が良いですし、合計では最大430万円にもなる大型の支援制度です。
支援の主な条件 | ・商店街または準ずる商業機能がある地域 ・小売業、サービス業、飲食業で公序良俗に反していない ・3年以上事業を継続する ・事業着手の1ヶ月前までに事前協議 |
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支援内容 | ・改装費の1/2(上限300万円) ・賃借料の1/2(上限25,000円を3年間) ・販促費の1/2(上限40万円) |
公式HP | 商店街空き店舗対策支援事業補助金制度のお知らせ |
兵庫県加西市(かさいし)
本来は雇用に対する助成が、空き店舗の活用と組み合わされている面白いケースです。支援金額は高いとは言えないものの、賃借料の上限が5万円と高く、開店当初の資金繰りを楽にしてくれるはずです。
支援の主な条件 | ・賃借して新たに事業を営む ・営業計画期間が2年以上 ・1週間あたり5日以上の営業日 ・商工団体に入会する ・空き店舗の所有者が3親等以内の親族ではない |
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支援内容 | ・改装費の1/2(上限100万円、市内業者に限る) ・賃借料の1/2(上限5万円を1年間) ・新規従業員1人あたり10万円(上限50万円、加西市民を開店から1年間継続雇用した場合) |
公式HP | 空き店舗活用補助 |
宮城県登米市(とめし)
他の自治体と比べて見劣りするのは仕方がないとしても、改修費と賃借料の両方で補助を受けると最大で100万円を超えるのですから、決して悪い制度ではありません。改修費の補助が小さいので、手直しが少ない空き店舗を選びましょう。
支援の主な条件 | ・空き店舗を賃借して出店する ・3年以上事業を継続する ・小売業、サービス業、飲食業 |
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支援内容 | ・改修費(設計費を含む)の1/2(上限35万円) ・賃借料の1/2(上限25,000円を2年間) |
公式HP | 登米市空き店舗活用事業補助金 |
佐賀県小城市(おぎし)
出店区域が限定されているタイプで、金額も最大100万円と大きくありません。ただ、備品を除く設備費が対象に入ることと、補助率が2/3と高いので、設備も手配しなくてはならない出店なら、十分に使える制度です。
支援の主な条件 | 市の指定区域にある空き店舗(空き家)で新規出店 |
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支援内容 | 改修費(工事請負費、備品を除く設備費)の2/3(上限100万円) |
公式HP | 空き店舗等を活用した出店に補助をします |