複数の民間調査で移住人気が高まっている鳥取県は、全国で最も人口が少ないだけに、過疎が進んでいると思われがちです。しかし、全域が過疎地域というわけではなく、鳥取県の過疎地域は、中国地方の他県と同様に内陸部で多く見られます。
注目すべきは、平成28年4月から小児医療費助成が高校生までに拡充されたことです。「子育て王国」を目指している鳥取県では、豊かな自然環境をバックにした、地域全体で支える子育ての実現に向け、条例や組織を整えるなど積極的な取り組みが目立ちます。
子育て環境は人によって考え方の分かれるところですが、県の制度として高校生までの助成は希少な存在で(他には福島県)、自治体格差を意識することなく移住先を選べるメリットは大きいでしょう。平成28年度の移住者は2千人を超えました(県公表値)。
なお、隣の島根県も含めて、日本海側にあたる山陰地方は雪が多いことでも知られています。特に鳥取県は、大雪でニュースになるほど降りますので、北陸に近いイメージを持って移住しないと、雪に悪戦苦闘することは間違いありません。
鳥取県の主要な町
鳥取市(とっとりし)
県庁所在地としては、甲府市に次いで人口が少ない鳥取市。約半数の10万人が住む人口集中地区は1.3%の人口増加、最も人口減少が激しい旧佐治村地区は-16.0%となっており、市内でも人口格差が大きい状況となっています。
鳥取空港からは、羽田便が1日5便(鳥取始発7:15、鳥取終着20:35)あるため、日帰りで東京へ行けること、県内では京阪神地方に近いこと、中国自動車道までは無料の鳥取自動車道があることから、県外とのアクセスは比較的良好です。
人口 | 193,717人(平成22年~27年増減率:-1.9%) |
地価水準(住宅地) | 32,479円/㎡(平成27年~28年変動率:-2.0%) |
主要交通など | 鳥取駅、鳥取空港 |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
家賃相場 | 5.3万円(1LDK/2K/2DK) |
介護保険料基準額 | 6,225円/月 |
病院数 | 12ヶ所 |
1万人あたり病床数 | 171.6床 |
保育所数 | 43ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 16ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 53.1ヶ所 |
気候 | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 4.0℃ | 13.0℃ | 25.7℃ | 16.7℃ |
平年降水量 | 202.0mm | 108.6mm | 200.9mm | 144.1mm |
米子市(よなごし)
鳥取県の人口は、東部の鳥取市と西部の米子市に集まっており、米子市は県西部の中心市です。地価水準は鳥取市と同等、米子空港があることも鳥取市と似ていますが、近隣に島根県松江市・出雲市などがある点で、孤立した鳥取市とは周辺環境が異なります。
古くから商業が発展しており、広域的な経済圏が鳥取市よりも大きい米子市は、少し遠出するだけで、より人口の多い松江市・出雲市へ行くことができる他、市域が狭くコンパクトな市街地が住みやすさに繋がっています。
人口 | 149,313人(平成22年~27年増減率:+0.7%) |
地価水準(住宅地) | 31,914円/㎡(平成27年~28年変動率:-1.5%) |
主要交通など | 米子駅(鳥取駅まで約1時間、米子空港駅まで約25分) |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
家賃相場 | 5.2万円(1LDK/2K/2DK) |
介護保険料基準額 | 6,212円/月 |
病院数 | 13ヶ所 |
1万人あたり病床数 | 180.9床 |
保育所数 | 41ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 6ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 58.0ヶ所 |
気候 | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 4.4℃ | 13.0℃ | 25.6℃ | 17.0℃ |
平年降水量 | 145.3mm | 104.9mm | 240.1mm | 129.8mm |
倉吉市(くらよしし)
鳥取県のほぼ中央に位置し、鳥取市と米子市のどちらからも特急で約30分の倉吉市は、1市4町からなる県中部圏域の中心的存在です。伝統的建造物や自然に恵まれている一方で、特急の止まる倉吉駅周辺以外は、交通で少し不便するのが難点でしょうか。
主要な市街地は、倉吉駅周辺と少し内陸の打吹地区に分かれます。歴史的には打吹地区が中心部でしたが、鉄道が廃線されたこともあり、市の活性化計画では倉吉駅周辺と打吹地区、加えて両地区を繋ぐ沿線地域まで中心市街地と定めています。
人口 | 49,044人(平成22年~27年増減率:-3.3%) |
地価水準(住宅地) | 21,606円/㎡(平成27年~28年変動率:-1.3%) |
主要交通など | 倉吉駅(鳥取駅まで約30分)、鳥取空港まで車で約50分 |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
家賃相場 | 5.0万円(1LDK/2K/2DK) |
介護保険料基準額 | 5,533円/月 |
病院数 | 9ヶ所 |
1万人あたり病床数 | 277.2床 |
保育所数 | 23ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 4ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 75.9ヶ所 |
気候 | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 4.2℃ | 12.5℃ | 25.0℃ | 16.6℃ |
平年降水量 | 144.4mm | 100.7mm | 204.6mm | 155.4mm |
境港市(さかいみなとし)
米子市から延びる、幅4kmほどの弓ヶ浜半島にあるのが境港市です。弓ヶ浜半島は、西側を中海(汽水湖)、東側を美保湾(日本海)に囲まれる砂州ですが、重要港湾の境港を持つ境港市では、港湾整備のため大部分の砂浜が失われました。
市民生活の重要な足は、半島先端の境港駅から米子駅(米子市)へ向かう境線で、境線は駅の間隔が狭く、市内の全域で駅へのアクセスに苦労しません。また、魚種が豊富な中海は、シーバスフィッシングのメジャーポイントとしても知られています。
人口 | 34,174人(平成22年~27年増減率:-3.1%) |
地価水準(住宅地) | 16,163円/㎡(平成27年~28年変動率:-2.6%) |
主要交通など | 境港駅(鳥取駅まで約1時間50分)、米子空港、境港 |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
家賃相場 | 4.7万円(1LDK/2K/2DK) |
介護保険料基準額 | 6,226円/月 |
病院数 | 2ヶ所 |
1万人あたり病床数 | 77.4床 |
保育所数 | 10ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 2ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 44.8ヶ所 |
気候 | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 4.6℃ | 13.1℃ | 25.5℃ | 17.3℃ |
平年降水量 | 177.6mm | 110.6mm | 232.5mm | 128.7mm |
東伯郡琴浦町(ことうらちょう)
県内に市が4つしかない鳥取県では、1万7千人あまりの琴浦町が人口第5位になります。倉吉市の東に接する琴浦町は、町の中で最も移住者が多く、平成27年度に173人、平成28年度は140人が移住してきました。
それでも人口は減っているのですが、人気の高い米子市と比較的近いですし、隣の倉吉市まで行けば特急も利用できます。市街地は、南部の山地から流れ出る河川の流域に形成されており、住むとすれば下流側(海側)が鉄道もあって便利でしょう。
人口 | 17,416人(平成22年~27年増減率:-6.0%) |
地価水準(住宅地) | 15,589円/㎡(平成27年~28年変動率:-3.2%) |
主要交通など | 浦安駅(鳥取駅まで約1時間)、鳥取空港まで車で約1時間 |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
家賃相場 | 4.7万円(1LDK/2K/2DK) |
介護保険料基準額 | 6,666円/月 |
病院数 | - |
1万人あたり病床数 | - |
保育所数 | 7ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 2ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 38.0ヶ所 |
気候(倉吉) | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 4.2℃ | 12.5℃ | 25.0℃ | 16.6℃ |
平年降水量 | 144.4mm | 100.7mm | 204.6mm | 155.4mm |
鳥取県で注目の町
岩美郡岩美町(いわみちょう)
「2016年版 住みたい田舎ベストランキング」で、堂々の総合1位になったことから注目され始めた岩美町は、鳥取市の東に接する日本海沿岸の町です。人口は減っていますが、平成28年度だけで人口の1%以上にあたる130人が移住する人気ぶりです。
リアル式海岸と白い砂浜が入り混じる海岸は、透明度が非常に高く、海水浴やバーベキュー、サーフィンなどで訪れる人が後を絶ちません。鳥取市のベッドタウンになる地勢を持っており、うまく人口減少に歯止めをかけることができれば今後も期待できます。
人口 | 11,485人(平成22年~27年増減率:-7.1%) |
地価水準(住宅地) | 12,925円/㎡(平成27年~28年変動率:-1.8%) |
主要交通など | 岩美駅(鳥取駅まで約25分)、鳥取空港まで車で約30分 |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
介護保険料基準額 | 6,637円/月 |
病院数 | 1ヶ所 |
1万人あたり病床数 | 91.5床 |
保育所数 | 3ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 2ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 16.6ヶ所 |
気候 | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 3.5℃ | 11.9℃ | 24.5℃ | 15.9℃ |
平年降水量 | 222.3mm | 117.7mm | 211.8mm | 180.4mm |
西伯郡大山町(だいせんちょう)
米子市の東にあり、標高1,700m級の大山が町名の由来となった大山町は、大山の頂上から海岸までの高低差が激しいので、居住に適さない山地も多くあります。その代わり、登山やウィンタースポーツが気軽にできるのは大山町の魅力でしょう。
遠出をしなくても、夏の海と冬の山が楽しめる環境は、西日本ではなかなか得られません。移住先でウィンタースポーツを始めたい・続けたいと考えている人は、大山町を始めとする大山の周辺自治体に住むのがおすすめです。
人口 | 16,470人(平成22年~27年増減率:-5.8%) |
地価水準(住宅地) | 7,336円/㎡(平成27年~28年変動率:-2.6%) |
主要交通など | 御来屋駅(鳥取駅まで約1時間、米子空港駅まで約1時間) |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
介護保険料基準額 | 6,417円/月 |
病院数 | - |
1万人あたり病床数 | - |
保育所数 | 5ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 2ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 20.6ヶ所 |
気候 | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 4.7℃ | 12.4℃ | 24.6℃ | 17.0℃ |
平年降水量 | 145.7mm | 102.3mm | 226.1mm | 136.0mm |
西伯郡日吉津村(ひえづそん)
周りは米子市に囲まれ、地図を見ても米子市の一部かと思ってしまうほど小さな日吉津村は、米子市との合併を拒み存続しています。それもそのはず、日吉津村は県内で最も財政力指数が高く(0.76、平成26年度)、合併する必要性は乏しいのです。
地価は下落傾向ですが、長期的な人口は順調に増えており、イオンモール日吉津があることも、村での暮らしを楽にしています。また、面積の狭い村なので、自転車で十分に移動でき、市の南部は最寄りの伯耆大山駅まで歩いて行ける距離です。
人口 | 3,439人(平成22年~27年増減率:+3.0%) |
地価水準(住宅地) | 21,933円/㎡(平成27年~28年変動率:-0.5%) |
主要交通など | 鳥取市まで車で約1時間40分、米子空港まで車で約30分 |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
介護保険料基準額 | 5,417円/月 |
病院数 | - |
1万人あたり病床数 | - |
保育所数 | 1ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | - |
1万人あたり飲食店 | 82.9ヶ所 |
気候(米子) | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 4.4℃ | 13.0℃ | 25.6℃ | 17.0℃ |
平年降水量 | 145.3mm | 104.9mm | 240.1mm | 129.8mm |
西伯郡伯耆町(ほうきちょう)
米子市の南にある伯耆町を取り上げたのは、米子市まで鉄道で約15分と近く、暮らしやすいのはもちろんですが、それほど広くない町域にゴルフ場が4つあることも大きな理由です。仕事は米子市、暮らしは冷涼な伯耆町という生活も悪くありません。
鳥取県は、丘陵が多い割にゴルフ場が多いとは言えず、ゴルフ好きが住むなら伯耆町は最高でしょう。大山の西麓なのでスキー場もありますし、町内を流れる日野側では鮎釣りが、その支流では渓流釣りが楽しめるアウトドア派向きの環境です。
人口 | 11,118人(平成22年~27年増減率:-4.3%) |
地価水準(住宅地) | 10,500円/㎡(平成27年~28年変動率:-2.1%) |
主要交通など | 岸本駅(鳥取駅まで約1時間半、米子空港駅まで約50分)、 |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
介護保険料基準額 | 5,417円/月 |
病院数 | 2ヶ所 |
1万人あたり病床数 | 219.0床 |
保育所数 | 5ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 1ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 15.8ヶ所 |
気候(米子) | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 4.4℃ | 13.0℃ | 25.6℃ | 17.0℃ |
平年降水量 | 145.3mm | 104.9mm | 240.1mm | 129.8mm |
鳥取県で支援制度が充実している町
西伯郡南部町(なんぶちょう)
米子市のすぐ南、島根県とも接する南部町は、住宅取得者に対して固定資産税相当額の奨励金制度が用意されています。町の市街地は米子市と近い北部なので、鉄道はなくても車さえあれば、それほど不便する地域ではありません。
ただし、奨励金が固定資産税相当額ということは、どのくらいの残存価値を持った家屋なのか、土地は自己取得なのかによって交付金額が大きく異なります。したがって、移住先で新築住宅を考えている人に狙い目の制度でしょう。
人口 | 10,950人(平成22年~27年増減率:-5.1%) |
地価水準(住宅地) | 10,975円/㎡(平成27年~28年変動率:-2.2%) |
主要交通など | 鳥取市まで車で約1時間50分、米子空港まで車で約40分 |
注目の支援制度 | 固定資産税相当額の定住促進奨励金 ・住宅の取得(新築・中古)が対象 ・土地が自己取得なら土地も対象 ・固定資産税相当分を5年間交付 ・住宅の建て替えは対象外 |
支援制度の公式HP | 定住促進奨励金制度 |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
介護保険料基準額 | 5,417円/月 |
病院数 | 1ヶ所 |
1万人あたり病床数 | 176.1床 |
保育所数 | 3ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 1ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 12.5ヶ所 |
気候(米子) | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | 4.4℃ | 13.0℃ | 25.6℃ | 17.0℃ |
平年降水量 | 145.3mm | 104.9mm | 240.1mm | 129.8mm |
日野郡日南町(にちなんちょう)
鳥取県で最も西、かつ最も南にある日南町では、過疎地域で人口減少の激しい状況を打破するため、平成27年末に移住体験住宅をオープンさせました。光熱水費込みで月額3万円は平凡な利用料と言えますが、最長で3年の長期滞在可能なのは珍しいです。
町の中心部に建てられた移住体験住宅には、単身者向けの部屋が6室あります。移住で難しいのが他者とのコミュニケーションですから、移住体験住宅で他の移住予定者と知り合っておくのは重要でしょう。掲載した気候データは中心部よりも高地の値です。
人口 | 4,765人(平成22年~27年増減率:-12.7%) |
地価水準(住宅地) | 7,650円/㎡(平成27年~28年変動率:-1.4%) |
主要交通など | 生山駅(鳥取駅まで約2時間半、米子空港駅まで約1時間40分) |
注目の支援制度 | 長期滞在可能な移住体験住宅 ・1Kの6室、1室につき駐車場1台 ・利用期間:3日~3年 ・利用料:3万円/月(光熱水費込み) ・WiFi利用可能 |
支援制度の公式HP | お試し住宅「ひだまりの家」 |
小児医療費助成 | 通院:高校生まで、入院:高校生まで |
介護保険料基準額 | 5,700円/月 |
病院数 | 1ヶ所 |
1万人あたり病床数 | 195.8床 |
保育所数 | 1ヶ所 |
介護老人福祉施設数 | 1ヶ所 |
1万人あたり飲食店 | 23.7ヶ所 |
気候 | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 |
平均気温 | -0.3℃ | 9.5℃ | 22.5℃ | 12.4℃ |
平年降水量 | 135.0mm | 118.8mm | 259.9mm | 134.6mm |