ふるさと納税の仕組み(自治体側)

現在の自治体財政は、ふるさと納税に大きく影響していると言わざるを得ません。既に自治体間の格差は広がっていますが、ふるさと納税を利用している人は約300万人(平成29年度)と少なく、まだまだ利用者の増加が期待できる制度です。

ところが、総務省は過熱した返礼品競争を受けて、ふるさと納税の規制を強化する方向に動き出しました。返礼品の基準に従わない自治体は、制度の対象外とする仕組みが盛り込まれます(平成31年度税制改正大綱)。

この規制強化は、せっかく盛り上がってきたふるさと納税に、水を差すとする意見がある一方、本来の制度趣旨に立ち返り、当然の改正とする意見もあって賛否両論です。変わりゆくふるさと納税を、今一度考えてみましょう。

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ふるさと納税のプラス面

ふるさと納税は、寄付金という直接的かつ財政的な恩恵を自治体にもたらします。そのため、財政面への影響が最も大きいのですが、恩恵はそれだけにとどまりません。

・大幅な増収の可能性
納税者の多くが寄付をする自治体には、単年度で数十億円もの寄付金が集まっています。寄付金を積み立てておくことで、将来の出費や事業に備える財政的余裕が生まれます。

・独自事業ができる
ふるさと納税は、自治体で使途を決められます(使途を明示して寄付を募ることも可能)。したがって、一般財源では行き届かない独自事業も、ふるさと納税を財源として行うことができます。

・地場産業の振興
返礼品を地域の特産品にすることで、地場産業の維持・振興に繋がります。当たり外れはありますが、人気になると返礼品の用意が追い付かないほどの需要です。

・知名度の向上
地方の中小自治体にとって重要なのは、何はともかく地域を知ってもらうことでしょう。ふるさと納税は、その入り口として適しており、有名自治体になることも可能です。

ふるさと納税のマイナス面

プラス面があればマイナス面もあるのが当然で、ふるさと納税は次のようなマイナス面も引き起こします。また、制度そのものへの問題点も指摘されています。

・住民税の減収
本来、地域住民から納付されるべき住民税が、他の自治体へ寄付されてしまうわけですから、地域住民がふるさと納税に積極的なほど減収になります。とりわけ、地方交付税の不交付団体は、地方交付税での補てんがなく深刻な問題でしょう。

・収支がマイナスになる可能性
ふるさと納税を受け入れる体制が整っても、運用コストが寄付金を上回るとマイナスです。少なくとも、運用コスト以上の寄付金を集めないことには、ふるさと納税への参入が逆に財政を圧迫します。

・自治体間の過剰競争
ふるさと納税は、通常の税収では考えられないほどの金額を、寄付の名目で集めることができるため、自治体間に過剰競争を引き起こしました。つまり、住民税の奪い合いが、日本全国で起こっている状況です。

・返礼品業者との癒着
返礼品の調達に公金が使われる性質上、返礼品業者と自治体職員との癒着、議員による口利きなど、公平性を疑われる要素は多くあります。実際に不正が起こっているかどうかは不明ですが、不正の起こりやすい土壌であることは間違いありません。

ふるさと納税の運用コスト

前述のとおり、ふるさと納税で増収を続けていくためには、運用コスト以上の寄付金が必要です。では、ふるさと納税にはどのような運用コストがかかるのでしょうか。

  • 返礼品の調達費・発送費
  • ポータルサイトの利用手数料・広報費
  • 決済費
  • 人件費・業務委託費

上記のうち、返礼品に対する費用以外は、ふるさと納税の運営方針によって変わります。また、返礼品の費用割合も、自治体によって考え方は様々ですが、後述の規制強化との兼ね合いで、3割以下にせざるを得ないでしょう。

なお、ふるさと納税による住民税の減収については、ふるさと納税に参入しなくても発生する減収(他自治体への流出)であり、運用コストからは除外しています(収支としては考慮する必要あり)。

総経費率は50%程度が妥当ラインか

返礼品の調達費・発送費以外のコストは、寄付者へのアピールと利便性から、ポータルサイトの利用、独自サイトの構築、パンフレット作成などの広報費、クレジットカード会社・金融機関への決済費、人件費・業務委託費に分かれます。

このうち、一説には10%とも言われるポータルサイトの手数料が大きいのですが、寄付者の多くはポータルサイトを利用することから、ポータルサイトを無視して勝ち残ることは難しいでしょう。

そうなると、返礼品の調達費が25%、発送費が5%として、ポータルサイト手数料10%を合計した経費率は40%に達します。決済費と業務委託費を加え、50%以内に抑えることができれば上々といったところでしょうか。

全ての業務を自治体職員が行うことは困難

自治体職員は、通常業務の行政サービスに必要な人員であり、寄付が増えるほど(規模が大きくなるほど)、ふるさと納税への対応は難しくなっていきます。臨時職員を雇用したくても、流動的なふるさと納税に適正な人員確保は難しいものです。

そのため、多くの自治体は代行業者へ委託しています。中には、完全に運営を丸投げして、寄付金の大半が経費で消える自治体もあると予想されますが、参入しないよりはマシという考え方を、全否定できるものではありません。

ふるさと納税の現状と返礼品の規制強化

ふるさと納税制度には、大都市圏へ集中する税収を地方に分散させる目的があり、寄付に名目が変わったとはいえ、お金が地方へ流れたことは確かなので、その意味では一定の成果を上げていると言えるでしょう。

しかしながら、制度趣旨と現実のふるさと納税には大きな隔たりがあり、熾烈な寄付金の獲得合戦が繰り広げられた結果、規制強化されるに至りました。

【本来のふるさと納税に期待された効果】

  • 納税者が寄付(実質的には税金)で自治体を応援できる機会
  • 納税者が税金の使い道について自覚する機会
  • 自治体が切磋琢磨することでの自治意識の高まり
  • 地場産品を使った地域振興

【実際のふるさと納税】

  • 納税者に寄付の意識は薄く、返礼品の価値で寄付が左右される
  • 事実上は税金での買い物に等しい(さらに転売されるケースも)
  • 自治体は地場産品に限らず、高還元率・換金性のある返礼品で競争
  • 災害でも起きなければ善意の寄付は集まらない

このような結果になったことは、税金を金品に換える機会だと考えてしまう寄付者の意識にも問題はありますが、なりふり構わず魅力的な返礼品を用意し、寄付金を集めようとする自治体側の姿勢にも問題がありそうです。

ただ、地方交付税が削減されてきた昨今、財政不安を抱える自治体にとっては、努力次第で財政再建のチャンスになることを踏まえると、それほど酷評されるべき制度でもないでしょう。

ふるさと納税制度の改正

従来から、返礼割合(還元率)の高さや返礼品の換金性を問題視していた総務省は、何度も通知を出して、過度な返礼品を自粛するように呼び掛けてきました。しかし、依然として一部の自治体が返礼品の見直しをせず、ついに制度そのものが改正されます。

・返礼品は3割以下の地場産品
適正な返礼品の返礼品割合を3割以下としました。また、返礼品を地場産品に限定して、地域資源の活用を促します。

・ふるさと納税の対象自治体を指定制に変更
ふるさと納税(個人住民税の特例控除)の対象を、自治体の申出により総務大臣が指定することになりました。返礼品の基準を守らない自治体は指定の取り消しもあります。

ちなみに、対象自治体の指定には、過去のふるさと納税への取り組みも考慮する方向なので、これまで通知に従わなかった自治体には厳しい内容です。これらの新ルールは、2019年6月1日以降の寄付金に適用されます。

今後のふるさと納税

寄付者側の視点では、制度改正によって返礼品の差は小さくなりますが、依然として返礼品のニーズは高く、有力な地場産品がある自治体が優位なのは変わらないでしょう。住民税の特例控除が受けられる限り、ふるさと納税は続くと思われます。

ただし、ふるさと納税をする人の全員が、寄付に対価を求めているわけではありません。現に、熊本地震の年度には、ほとんど返礼品がない熊本市に、約37億円もの寄付が集まりました。

また、返礼品がなくても(もしくは僅かでも)、賛同を得られる事業に対し、ふるさと納税で寄付している一定層も存在すると考えられます。使途が明確なら、自分のお金を使って欲しいと考えている人は必ずいるのです。

つまり、寄付意識の高い人たちには、寄付したいと思わせる使途でアピールし、寄付意識が低く対価が目的の人たちには、引き続き返礼品で勝負するしかありません。主な特産品がない自治体は、発掘・創出していく努力も必要でしょう。

どちらで勝負できるかは各自治体の事情によりますが、個人でも寄付型のクラウドファンディングで資金を集める人がいるくらいなので、組織で考えれば何かしらのアイデアが出るのではないでしょうか。

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