日本の下水道普及率は77.8%(日本下水道協会調べ、平成28年3月31日現在、福島県の一部を除く)となっており、必ずしも移住先で下水道が完備されているとは限りません。
都市圏の下水道普及率が高いのは当然ですが、政令指定都市だからといって楽観はできず、例えば岡山市は65.5%と全国平均を下回りますし、新潟市、静岡市、浜松市、熊本市も90%に未到達です。
以前まで下水道のない地域では、台所や風呂などの生活雑排水が未処理、トイレは汲み取り式か単独処理浄化槽でした。現在は、生活雑排水とトイレ汚水を両方処理できる、合弁処理浄化槽への転換が進められています。
しかし、合弁処理浄化槽への転換は法律上の義務ではなく(新設は義務)、費用も高いことで普及が進まないため、国・都道府県・市町村が負担して、合弁処理浄化槽に補助金を出しているわけです。
支援制度の仕組み
まずは、移住先での排水処理がどのようになっているか確認しましょう。そして、下水道事業計画区域または農林漁業集落排水事業計画区域であるかどうかも重要です。これらの区域は、処理施設がある(近い将来できる)ので原則補助金の対象になりません。
【下水道・集落排水がない場合】
- パターン1:これから新築する
- パターン2:既築で生活雑排水は未処理、トイレは汲み取り式か単独処理浄化槽
- パターン3:既築(建売含む)で生活雑排水とトイレが合弁処理浄化槽
【浄化槽設置の補助金対象】
- パターン1:合弁処理浄化槽または高度処理型合弁処理浄化槽の新設
- パターン2:合弁処理浄化槽または高度処理型合弁処理浄化槽への転換
- パターン3:高度処理型合弁処理浄化槽への転換
パターン3では、既に合弁処理浄化槽が設置されているので、本来は補助金の対象にならないのですが、より環境意識の高い自治体は、窒素やリンを除去する高度処理型合弁処理浄化槽への転換でも補助金を出しています。
なお、高度処理型合弁処理浄化槽を推進している自治体は、一般の合弁処理浄化槽の新設や転換を、補助金の対象外としていることがあるので注意してください。
この支援制度を設けている主な自治体
下水道普及率を考えれば、ほとんどの自治体が浄化槽に補助金を出しているはずです。ここで取り上げているのは、上限額が高いと思われる自治体ですが、ランキングではありません。
1つの目安として国の基準額があり、以下の金額よりも多い自治体は、都道府県または市町村が補助金をかさ上げしています(年度によって基準額は変わります)。
- 5人槽:332,000円
- 7人槽:414,000円
- 10人槽:548,000円
また、高度処理型合弁処理浄化槽は法律上で必要とされている設備ではないため、一般の合弁処理浄化槽でも補助対象となる自治体を選んでいます。
北海道苫小牧市(とまこまいし)
施工業者を市が指定している以外は、特別な条件もなく高額の補助を受けられます。ただし、単独処理浄化槽の撤去に対する補助金は、設置費用として計上されるため加算されることはありません。
支援の主な条件 | ・市街化調整区域で下水道事業区域外 ・併用住宅は住居部分が1/2以上 ・10人槽以下 ・市の指定業者での施工 |
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支援内容 | ・5人槽900,000円 ・7人槽1,100,000円 ・10人槽1,500,000円 |
公式HP | 苫小牧市浄化槽設置整備事業補助金 |
鹿児島県出水郡長島町(ながしまちょう)
併用住宅に居住部分の面積1/2以上要件がなく、これは全国的に見ても珍しいです。移住先で店舗併用住宅を考えている人にとっては重要でしょう。補助金額が大きく、単独処理浄化槽の撤去や配管布設にも補助があります。
支援の主な条件 | ・町内全域 ・併用住宅の居住部分が1/2未満でも可 ・50人槽以下 |
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支援内容 | ・5人槽811,000円 ・7人槽973,000円 ・10人槽1,262,000円 ・単独処理浄化槽の撤去に上限9万円 ・9m以内の配管布設に上限3万5千円 |
公式HP | 合併処理浄化槽整備事業の推進について |
大阪府南河内郡千早赤阪村(ちはやあかさかむら)
特に5人槽の補助金額が高い水準で、ほぼ設置費用をカバーできると思われます。ただし、以下の補助金額は、過疎地域自立促進特別措置法が失効する平成33年3月31日までの特例措置で、本来は国の基準額水準です。
支援の主な条件 | ・下水道処理区域外もしくは下水道計画区域内で整備が大幅に遅れる地域 ・併用住宅は住居部分が1/2以上 ・10人槽以下 |
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支援内容 | ・5人槽918,000円 ・7人槽1,021,000円 ・10人槽1,242,000円 |
公式HP | 浄化槽設置整備事業補助金について |
岐阜県下呂市(げろし)
国の基準額水準で補助している自治体が多い中、これだけの補助金額であれば十分に評価できます。補助金額に範囲があるのは、豪雪地域指定区域(馬瀬地域)に増額があるからで、他の地域では範囲の左側を参考にしてください。
支援の主な条件 | 下水道事業区域外または農業集落排水事業区域外 |
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支援内容 | ・5人槽519,000円~540,000円 ・7人槽747,000円~774,000円 ・10人槽1,132,000円~1,195,000円 |
公式HP | 浄化槽設置整備事業補助金 |
静岡県富士市(ふじし)
富士市の補助金は、区域によって限度額が大きく変わります。下水道計画区域に入っていると国の基準額水準ですが、下水道計画区域から外れていると手厚く補助され、一部区域では単独処理浄化槽や汲み取り式からの転換でさらに手厚くなります。
支援の主な条件 | ・下水道計画区域および中野台下水処理施設の処理区域を除く区域 ・下水道予定処理区域外もしくは下水道予定処理区域で整備が7年以上見込まれない区域 ・併用住宅は住居部分が1/2以上 ・10人槽以下 |
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支援内容 | ・5人槽332,000円~735,000円 ・7人槽414,000円~919,000円 ・10人槽548,000円~1,216,000円 |
公式HP | 浄化槽設置費補助金 |