進学・修学の資金が不足して、学生が奨学金を借りるケースは年々増えており、今では大学生の2人に1人が奨学金を借りています。本来であれば、全ての子供に均等な教育の機会を与えるべきですが、現実的にはそうなっていません。
そして、奨学金の大部分は、卒業後に利息付きの返済が待っている「借金」で、返済不能となる若者の増加は社会問題化しています。これからを担う世代が、マイナスからのスタートで社会に加わることは、決して望ましい状況ではないでしょう。
経済的な理由で学業の道が閉ざされないように、自治体は奨学資金を貸し付けています。その目的は、自治体内での人材育成が、地域の衰退に歯止めをかけ、発展に寄与する期待にあります。
支援制度の仕組み
自治体の奨学資金貸与制度は、無利息であることを除き、他の貸与型奨学金とそれほど変わりません。本人の成績や、連帯保証人となる保護者等の所得を審査されて、貸与可能と判断されれば既定の範囲内で毎月(または一定時期ごとに)貸付されます。
貸与される資金には、入学用の資金と修学用の資金があり、入学用の資金は、基本的に入学時にしか借りられないか、特別に増額を認める制度で対応しています。
【自治体の奨学資金貸与制度】
- 入学資金:別枠で入学時に貸与または増額で貸与
- 修学資金:毎月または一定時期ごとに貸与
- 償還期間:固定期間または貸与期間に応じた期間
無利息ですから、他の貸与型奨学金よりも自治体を優先したくなりますが、残念なことにそれほど多くの金額を貸し付けてもらえず、他の奨学金と併用できない場合もあるので金額不足には要注意です。
また、償還(返済)については、卒業後の一定期間経過後から始まる点も他の貸与型奨学金と変わりません。ただし、償還期間にはバラつきがあって、○年などの固定期間になるのか、貸与期間の○倍といった期間になるのかは自治体しだいです。
この支援制度を設けている主な自治体
給付型(返済不要)の奨学資金と異なり、貸与型は大抵の自治体で実施されているはずです。しかし、既に説明のとおり、貸付金額は多くない上に、他の奨学金と併用できない場合があるので、少しでも高額で貸してくれる自治体を選ぶべきでしょう。
- 高校から貸付対象になっている
- 高校で1万5千円以上、大学で4万円以上の貸付金額
- 償還期間が10年以上(4年制大学時)
以降で取り上げている自治体は、上記の基準で絞り込みました。
福島県双葉郡大熊町(おおくままち)
大学なら7万円まで借りられる自治体は、全国でもそれほど多くありません。高校の3万円も高い水準ですし、償還期間が10年なのも高評価です。唯一あるとすれば、5年以上の居住が要件になっていることでしょうか。
支援の主な条件 | ・品行が正しく学術に優れ身体が強健である ・高校、高専は引き続き5年以上町に住所がある ・専修学校(専門課程)、大学は生活の主体者が引き続き5年以上町に住所がある |
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支援内容 | ・高校、高専:30,000円以内(入学時の4月に限り100,000円も可能) ・専修学校(専門課程)、大学(国立高専含む):70,000円以内(入学時の4月に限り200,000円も可能) |
償還期間 | 卒業月の6ヶ月後から10年以内 |
公式HP | 奨学資金貸与制度 |
茨城県那珂郡東海村(とうかいむら)
東海村の奨学資金貸与は、学校によって細かく貸与金額が変わり、費用がかかる私立では拡充されています。修学資金も高水準ですが入学準備金が高額で、多額の資金が必要な入学時には重宝するでしょう。
支援の主な条件 | ・村に1年以上住所がある親の子供 ・経済的な理由で修学が困難 ・学業成績が優秀で向学心が旺盛である |
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支援内容 | 【修学資金】 ・高校:国公立25,000円、私立35,000円 ・高専:第1学年~第3学年25,000円、第4学年以上40,000円 ・専修学校:高等課程35,000円、専門課程40,000円 ・大学:40,000円 【入学準備金】 ・高校:私立のみ300,000円以内 ・高専:300,000円以内 ・専修学校:高等課程300,000円以内、専門課程500,000円以内 ・大学:国公立300,000円以内、私立500,000円以内 |
償還期間 | 卒業月の1年後から10年以内 |
公式HP | 東海村奨学金制度(修学資金)について 東海村奨学金制度(入学準備金)について |
栃木県日光市(にっこうし)
償還期間が貸与期間の3倍に設定されているので、4年制大学や5年制高専は、償還期間が他の自治体よりも長くなって返済が少し楽です。逆に、2年制や3年制の学校では、10年以内など固定の償還期間よりも短くなります。
支援の主な条件 | ・保護者が市に居住している ・学業成績が優秀で身体が健康である ・経済的理由により修学が困難 |
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支援内容 | 【修学資金】 ・高校、高専:20,000円(自宅外通学は30,000円も可能) ・大学、短大、専門学校:40,000円(自宅外通学は50,000円も可能) 【入学準備金】 ・高校、高専:100,000円以内 ・大学、短大、専門学校:300,000円以内 |
償還期間 | 卒業月の1年後から貸与期間の3倍に相当する期間 |
公式HP | 奨学生(奨学金貸付)募集 |
宮城県黒川郡大郷町(おおさとちょう)
保護者に3年以上の居住用件があるため、移住してすぐに借りられるわけではないことには注意が必要です。それ以外では、高校で最大3万円の貸与は高水準ですし、償還期間も10年間で及第点でしょう。
支援の主な条件 | ・品行方正にして身体強健 ・学力及び資質が優れていると認められる ・経済的理由により修学に困難がある ・保護者が3年以上引き続き町に住所がある |
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支援内容 | ・高校:3万円以内 ・短大、大学、大学院、専門学校:4万円以内 |
償還期間 | 卒業月の1年後から10年以内 |
公式HP | 奨学資金借入申請 |
新潟県南魚沼郡湯沢町(ゆざわまち)
大郷町とは逆に高校が2万円と低く、大学等は5万円と高水準です。国外でも対象になる点と、何よりも他の奨学金と併用可能になっているので、詳しくは公式HPを必ず確認するようにしてください。
支援の主な条件 | ・保護者が町に住民登録して居住している ・心身共に健全で修学に対する意欲がある ・世帯の前年所得税の合計が50万円以下(例外あり) |
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支援内容 | ・高校、専修学校(高等課程):20,000円以内 ・大学院、大学、短期大学、専修学校(専門課程):50,000円以内 ・国外:50,000円以内 |
償還期間 | 最終貸与月の翌年度から貸与年度数の2.5倍に相当する期間 |
公式HP | 奨学金貸与制度 |