出産だけで40万円程度のお金がかかり、ほぼ同額を出産育児一時金でまかなえるとしても、ベビー用品や健診など、出産後にかかるお金も相当なものです。近年の少子化へと向かった背景に、経済的事情が含まれていることは否定できないでしょう。
人口を維持・増加したい自治体としては、若い世代が将来の高齢化を支える人口構成を目指さなくてはなりません。人口は社会増(転入が転出を上回ること)でも増えますが、望ましいのは自然増(出生が死亡を上回ること)です。
つまり、子供が生まれ育つことこそ、地域の将来にとって重要課題なのは明らかで、各自治体は出産祝金や出産奨励金など(以下、出産祝金)によって、出産した世帯を支援しています。
支援制度の仕組み
出産祝金は、目的が人口維持・増加にあるため、2人の親から第1子が生まれるだけでは、単純計算で人口が1人減ることになり、支給対象外としている自治体があります。さらに、人口増加にならない第2子まで支給対象外の自治体もあります。
その一方で、第1子から支給している自治体も相当数あるのですが、子供の数が増えるほど支給額を増やす方法がスタンダードで、主な支給方法は次のようなものです。
【主な出産祝金の支給方法】
- 子供1人につき定額を支給
- 子供の数が増えるほど増額して支給
- 第3子から支給
- 子供の成長に合わせて分割支給
出産したことは出産届で把握できる性質から、特に事前の届出・申請は必要なく、出生児の出産届と住民登録を済ませ、なおかつ出生から一定期間内に申請するパターンが多いです。
また、出産祝金は保護者に住民登録があることを原則としますが、里帰りで出産する人も少なからずいるでしょう。出産のための一時的な住民異動は、許容される自治体と許容されない自治体があるので要注意です。
この支援制度を設けている主な自治体
多くの自治体が出産祝金を用意しており、市よりも手厚い町村が数多く存在します。財政が厳しい町村でも、現状の過疎化を打開するための施策として、支給額が高くなりがちになるのでしょうか。
肝心の支給額については、数千円から数十万円まで実に幅広く、次のいずれかに該当する自治体を取り上げました。
- 第1子から10万円以上の支給がある
- 第4子までの合計で50万円以上の支給がある
岡山県高梁市(たかはしし)
第3子から急激に手厚くなり、一度に支給されないのはマイナスですが、出生後の転入でも一部が支給される異例の対応です。出産祝金に成長祝金を組み合わせたような制度で、第3子が幼いか出産前、かつ移住してから第4子も考えている世帯には魅力的です。
支援の主な条件 | ・出生児(転入者を含む)を養育している ・市の住民基本台帳に記載 ・市に居住している |
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支援内容 | ・第1子と第2子:出生時2万円 ・第3子:出生時10万円、1歳時20万円、小学校入学時20万円 ・第4子以降:出生時20万円、1歳時40万円、小学校入学時40万円 |
第4子まで合計 | 154万円(第3子・第4子は商品券の可能性あり) |
公式HP | 出産祝金制度が拡充されました |
熊本県玉名郡和水町(なごみまち)
第1子から20万円支給される自治体は少なく、高梁市とは正反対に、子供を多く考えていない世帯にも手厚いです。また、ほとんどの自治体で税金等の滞納者は支給対象外ですが、和水町は出産祝金から滞納分を控除して支給します。
支援の主な条件 | ・子供を出産し養育している ・子供の出生時、町内に居住 ・町の住民基本台帳または外国人登録原票に記載または登録 ・町内で出生児と3年以上居住する意思 |
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支援内容 | ・第1子~第3子:20万円 ・第4子:35万円 ・第5子以降:50万円 |
第4子まで合計 | 95万円 |
公式HP | 出生祝金を支給します |
長野県北安曇郡小谷村(おたりむら)
第1子から第3子まで、段階的に定額加算の良くあるパターンです。ただし、支給額は高水準で、決して財政状況が良いとは言えない村ですが(財政力指数0.23)、平成26年度から増額しており人口減少への対策強化が伺えます。
支援の主な条件 | ・村に住所がある出生児の保護者 ・出産後も出生児と共に1年以上住所がある |
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支援内容 | ・第1子:10万円 ・第2子:20万円 ・第3子以降:30万円 |
第4子まで合計 | 90万円 |
公式HP | 小谷村出産祝金が支給されます |
群馬県邑楽郡明和町(めいわまち)
小谷村と同じ支給額ながら、分割支給されるのは残念なところです。1年以上の住民基本台帳登録を支給要件としていますが、転入から間もない転入者に対しても、要件緩和の規定がある点は評価できます。
支援の主な条件 | 町の住民基本台帳に1年以上登録(税金等の滞納がなければ1年未満でも1年経過で支給対象となる) |
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支援内容 | ・第1子:出生時2万円、3歳時3万円、6歳時5万円 ・第2子:出生時4万円、3歳時6万円、6歳時10万円 ・第3子以降:出生時6万円、3歳時9万円、6歳時15万円 |
第4子まで合計 | 90万円 |
公式HP | 出産祝金 |
広島県庄原市(しょうばらし)
第1子と第2子の合計支給額はまずまず、第3子以降はもう一声欲しい水準で、子供の数が多いほど手厚くなる他の自治体とは差が付きやすいです。明和町と同じく、転入者に対する要件緩和があります。
支援の主な条件 | ・出生児を監護し生計を同じくする保護者 ・出産前の1年以上市内に住所がある(1年未満でも1年経過で支給対象となる) ・申請時に出生児と同居 ・祝金の受給後1年以上、出生児と共に市内で住所を有する意思 |
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支援内容 | ・第1子と第2子:15万円 ・第3子以降:25万円 |
第4子まで合計 | 80万円 |
公式HP | 出産祝金 |