奨学金には、卒業後に返済(償還)が必要な「貸与型」と、返済が必要ない「給付型」があります。今回紹介するのは給付型の制度で、言ってみれば「タダで貰える」奨学金です。
奨学金制度を本来の意味で考えたとき、給付型の奨学金であるのがベストですし、奨学金は全て貰えるお金と考えている人も多いでしょうか。しかし、現実は甘くなく、貸与型奨学金の返済に困っている卒業生は後を絶ちません。
自治体としても、意欲のある生徒・学生が、経済的理由で進学・修学を諦めてしまわないように、奨学資金制度を用意しています。それでも、税収で成り立つ自治体が、給付型の奨学金を続けるには住民の理解が必須でしょう。
支援制度の仕組み
民間においては、篤志家(慈善事業や社会奉仕の志が高い人)や企業等によって、給付型の奨学金が設立されています。したがって、自治体以外にも給付型の奨学金が地域に存在しないか、リサーチしてみることは大切です。
自治体においては、税収から積み立てた基金で運用しているか、篤志家からの寄付を運用(個人名が付いている制度も多い)しているので、必ずしも資金が潤沢ではありません。ですから、支給要件が厳しく、支給金額も少なくなる傾向です。
【奨学資金の支給を受けるための主な条件】
- 本人または保護者が自治体内に一定期間居住
- 学業が優秀で健康面に問題なく卒業見込みがある
- 所得が一定水準以下
その一方で、予算が限られる給付型では、できるだけ多くの人に支給できるよう、少額にして募集人数を多くしているケースが見られます。町村では数人から数十人単位ですが、大きな市になると数百人単位になるので、その意味では間口が広いとも言えます。
なお、他の奨学金との兼ね合いについては、併用不可とする自治体、併用でなければ不可とする自治体、給付型だけを併用不可とする自治体などバラエティに富んでいます。
この支援制度を設けている主な自治体
貸与型を行っている自治体は多くても、給付型はそれほど多くの自治体で行われていません。よって、制度があるだけでも十分と考えるべきで、自治体を絞り込むにあたっては次の点を重視しました。
- 支給対象となる学校が多い
- 高校等は年額で5万円を超えている
- 大学等は年額で10万円を超えている
愛知県豊田市(とよたし)
高校、大学とも高水準で、特に大学の2万円超えは、給付型ではなかなか見られません。そして何よりも優れているのは、日本学生支援機構などから奨学金を受けていても、支給対象になることです。
支援の主な条件 | ・成績優秀、健全で品行方正 ・経済的な理由により修学困難 ・保護者が市に1年以上居住している |
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支援内容 | ・高校等:月額8,000円 ・大学等:月額22,500円 |
公式HP | 豊田市奨学生募集 |
滋賀県湖南市(こなんし)
支給額はそれほど高いと言えないですが、高校は通学費、大学は入学支度金が別途支給される点で選びました。大学では他の貸与型奨学金を受けていないと、支給対象から外れることに注意してください。
支援の主な条件 | ・申請時に1年以上市に住所がある ・向学心があり修学が確実 ・地域に根差した社会貢献活動をしていく意欲がある ・滋賀県奨学資金または日本学生支援機構奨学金等から奨学金の貸与を受けている(大学等のみ) |
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支援内容 | ・高校等:国公立月額5,000円、私立月額9,000円(他に12,000円を上限として年間通学費の1/3を支給) ・大学等:月額15,000円(50,000円の入学支度金あり) |
公式HP | 湖南市奨学資金給付制度 |
東京都小金井市(こがねいし)
小金井市の制度が特徴的なのは、給付型であるにもかかわらず、保証人が1人必要になることです。これは、不正受給で返還を求められた場合に、返還能力を担保するためですが、不正受給の防止策を厳しくしている自治体もあるということです。
支援の主な条件 | ・支給日の6ヶ月前から市に住所がある親の子供 ・同種の奨学金を他から支給されていない ・成績優秀かつ心身健全 ・経済的理由により修学困難 ・保証人が1人必要 |
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支援内容 | ・高校等:月額5,300円 ・大学等:月額12,200円 |
公式HP | 奨学金制度の案内 |
京都府京丹後市(きょうたんごし)
京丹後市の給付型奨学金は、高校、高専、専修学校、大学、短大、大学院を含み、ほとんどの学校を対象としています。また、高校等で5,000円、大学等で10,000円の支給額は、1つの基準となるラインでしょう。
支援の主な条件 | ・市に生計を一にする親族がいる ・勉学意欲があると認められる ・経済的理由により修学が困難 |
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支援内容 | ・高校等:月額5,000円 ・大学等:月額10,000円 |
公式HP | 京丹後市奨学金について |
長崎県大村市(おおむらし)
センター試験の国英数合計で9割とらなくてはならず、支給要件のハードルは非常に高いのですが、月額で50,000円もの高額支給を受けられます。学業が特別に優秀な学生を支援するための制度なので、さすがに該当する人は少ないかもしれません。
支援の主な条件 | ・市に1年以上住所があり引き続き住所を有する者またはその子 ・大学(短大を除く)の第1学年である ・センター試験の国英数合計得点が9割以上 ・経済的理由により修学が困難 ・市の貸与型奨学生ではない ・他に給付型の奨学金を受けていない |
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支援内容 | 月額50,000円 |
公式HP | 大村市奨学金制度について |