がん検診の推進による支援

日本人の3割が、何らかのがんによって亡くなっている現状を踏まえれば、早期発見に繋がるがん検診の存在は、保健事業として重要な位置付けです。国もがん検診を推進(国庫補助)しており、市区町村レベルで実施されています。

そのため、どこに移住してもがん検診は受けられると考えて問題ないですが、どこまで公費負担してくれるのか、どの種類のがん検診を実施しているのかは自治体しだいです。少しでも多くのがん検診を、数多く行っている自治体を選びましょう。

支援制度の仕組み

がん検診は、法律(健康増進法)でも実施に努力義務が規定されているため、厚生労働省が実施のための指針を出しています。

【国の指針にあるがん検診】

  • 胃がん検診:40歳以上、年に1回
  • 肺がん検診:40歳以上、年に1回
  • 大腸がん検診:40歳以上、年に1回
  • 乳がん検診:40歳以上、2年に1回
  • 子宮がん検診(頸部・体部):20歳以上、2年に1回
  • 総合がん検診:40歳以上および50歳以上、年に1回

各自治体は、指針に沿って各種がん検診を実施していますが、総合がん検診については、全てのがん検診を同時実施できる医療機関の存在が不可欠で、必ずしも実施されているとは限りません。

また、がん検診の費用は、基本的に少額の自己負担(検診内容によって数百円~3,000円程度)で抑えられており、個人検診(医療機関)よりも集団検診(保健センターなど)で受けると安く済みます。

その他、検診の受診率を上げる目的から、特定の年齢または特定のがん検診には、無料クーポン券が配布されています。特に、子宮がん、乳がん、大腸がんの3種は、配布している自治体が多いので注目してみてください。

この支援制度を設けている主な自治体

5種(胃がん、子宮がん、肺がん、乳がん、大腸がん)のがん検診は、どの自治体でも実施されているので、特別取り上げるほどではありません。したがって、自治体を絞り込むにあたっては、次の点を重視しました。

  • がん検診5種以外のがん検診を行っている
  • 対象年齢が国の指針よりも若い
  • 子宮頸がん、乳がん、大腸がん以外で無料クーポン券を配布している
  • 自己負担額が安いまたは無料

自治体にしてみると、がん検診の負担を重くして、将来の医療費負担を未然に防ぐのか、がん検診の負担を軽くして、将来の医療費負担を覚悟するのか、その判断は難しいでしょう。しかし、住民にとってはがん検診を充実してもらったほうが良いはずです。

埼玉県新座市(にいざし)

埼玉県新座市
子宮がんを除いた4種のがん検診が、30歳以上から受けられること、そして何よりも、年度内に1回であれば、全てのがん検診が無料になっている点で選びました。現実的にも、年に1回の受診で十分ですから、常に無料のようなものです。

がん検診の実施 ・胃がん:30歳以上
・肺がん:30歳以上
・大腸がん:30歳以上
・乳がん:30歳以上
・子宮がん:20歳以上
・前立腺がん:55歳以上
自己負担額 年度内に1回のみ無料
公式HP がん検診について

兵庫県加古郡播磨町(はりまちょう)

兵庫県加古郡播磨町
4種のがん検診において、対象年齢を国の基準よりも大幅に低い18歳に設定しているので、きちんと検診を受ける意識さえあれば早期発見は確実です。自己負担額は低いとは言えませんが、65歳以上を無料化しているので仕方がないでしょう。

がん検診の実施 ・胃がん:18歳以上
・肺がん:18歳以上
・大腸がん:18歳以上
・乳がん:40歳以上
・子宮がん:18歳以上
自己負担額 ・胃がん: 1,400円、65歳以上は無料
・肺がん:700円、65歳以上は無料
・大腸がん:1,000円、65歳以上は無料
・乳がん:3,300円
・子宮がん:頸部1,200円~1,500円、頸部・体部1,800円~2,200円、65歳以上は無料
※無料クーポン券:大腸がん、乳がん、子宮がん
公式HP がん検診とは

愛知県名古屋市(なごやし)

愛知県名古屋市
対象年齢は国の指針と同じながら、前立腺がん検診が追加され、自己負担額が検診ごとに500円と非常に安価です。医療機関で受診すると数千円かかる検診もあるのが通常で、名古屋市は指定医療機関と保健所等のどちらで受診しても500円です。

がん検診の実施 ・胃がん:40歳以上(内視鏡は50歳以上で2年度に1回)
・肺がん:40歳以上
・大腸がん:40歳以上
・乳がん:40歳以上
・子宮がん:20歳以上
・前立腺がん:50歳以上
自己負担額 検診ごとに500円(70歳以上は無料)
※無料クーポン券:大腸がん、乳がん、子宮がん
公式HP がん検診のご案内

北海道帯広市(おびひろし)

北海道帯広市
胃がん検診の35歳以上はともかく、肺がん検診を15歳から行っており、これは全国的に見ても珍しいでしょう。喫煙の低年齢化が問題となっていること、受動喫煙を考慮しても、肺がん検診の対象年齢を下げる施策は評価できます。

がん検診の実施 ・胃がん:35歳以上
・肺がん:15歳以上
・大腸がん:40歳以上
・乳がん:40歳以上
・子宮がん:20歳以上
・前立腺がん:50歳以上
自己負担額 ・胃がん:1,100円(集団のみ)
・肺がん:15歳~39歳無料、40歳以上400円~1,010円
・大腸がん:550円~1,000円
・乳がん:1,600円~2,100円
・子宮がん:1,320円~2,300円
・前立腺がん:600円~1,000円
※無料クーポン券:乳がん、子宮がん
公式HP 健康診査、がん・結核・肝炎ウィルス検診

鳥取県鳥取市(とっとりし)

鳥取県鳥取市
対象年齢は国の指針と同じ、追加のがん検診はなく自己負担額もあるので、取り上げるほどではないように思えますが、5種全てのがん検診に対して、5年ごとの無料クーポン券を配布している自治体はそれほどありません。

がん検診の実施 ・胃がん:40歳以上
・肺がん:40歳以上
・大腸がん:40歳以上
・乳がん:40歳以上
・子宮がん:20歳以上
自己負担額 ・胃がん:500円~2,000円
・肺がん:無料~2,000円
・大腸がん:200円~500円
・乳がん: 500円~1,300円
・子宮がん:500円~2,800円
※無料クーポン券:5種全てを5年ごと
公式HP 鳥取市がん検診
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